
名前 スミレ(紫花地丁)
基原 スミレ科スミレ属 ノジスミレ、コスミレなど無茎種の全草
性味 苦・辛/寒
帰経 心・肝
効能 清熱解毒・涼血消腫
スミレは多くの種類があり、日本でも野山や畑、市街地など、身近な場所で見かけるありふれた野草です。
英語の「Violet(ヴァイオレット)」はスミレの花の色に由来する青みを帯びた紫色を指し、欧米では愛や控えめな美しさの象徴とされています。可憐な姿とは裏腹に、アスファルトやコンクリートのわずかな隙間にも生える、非常に繁殖力旺盛な「ど根性」の一面も持っています。
園芸店で見かける色とりどりのビオラやパンジーも、同じスミレ科スミレ属の仲間です。しかし、スミレは形態的に大きく2つのタイプに分けられます。
無茎種(むけいしゅ)
地面から直接葉や花が出るタイプで、花茎のみが伸びます。ロゼット状で茎が目立ちません。
例:ノジスミレ、タチツボスミレ、コスミレ など
有茎種(ゆうけいしゅ)
地上に茎が立ち、枝分かれしながら広がるタイプです。
例:パンジー、ビオラ、ツタスミレ など
中薬として用いられるのは主に無茎種で、紫花地丁はノジスミレなど無茎種の野生スミレの全草を使用します。
味は苦辛く、性は寒。清熱解毒、涼血消腫の作用を持つとされ、火毒による疔瘡癰腫(皮膚の化膿性疾患)など伝統的に内服・外用の両方で用いられてきました。
中国ではスミレを「紫花地丁」または「堇堇菜」と呼びます。「紫」の花を咲かせ、地面に張り付くように(地)生え、茎が「丁」字(釘)のように見えることから「紫花地丁」と名付けられたといわれています。
また、明代の植物図譜『救荒本草』にも記載が見られ、古くから食用・薬用植物として利用されてきたとされています。
日本では、大工が使う墨入れの形に花が似ていたことから、「墨入れ」が転じて「スミレ」と呼ばれるようになったといわれています。
スミレは簡単に育てることができ、プランターや庭に一度植え付ければ、特に虫もつかず、こぼれ種で自然に増え、毎年春先に可憐な花を咲かせてくれます(増えすぎて困ることも!)。最近では園芸店やネットショップでも、様々なスミレの苗を見つけることができます。
若芽や花は、おひたし、和え物、天ぷら、酢の物、サラダなどで利用できます。葉は癖が少なく、わずかにぬめりがあり、ワラビやカタクリにも似た、春の野草らしい味わいです。
※野草の採取・食用は、確実に同定できるものに限って自己責任で行ってください。
今回は開いた花を少しいただいて、砂糖漬けにしてみました。
花を摘む時間も、砂糖の衣が乾くのをのんびり待つ時間も、ガラス瓶に入れて眺める時間も、どれも小さな楽しみです。そっと口に入れると、シャリシャリとした甘さとともに、ふんわりとスミレの香りが広がり、心がふっと緩みます。



中薬を自分で育ててみる。
思いがけない発見や美しさに出会える、とても楽しい時間です。
参考文献
『中薬学』東洋学術出版社

セキネ
2014年9月北京中医薬大学日本校(現 日本中医学院)
中医薬膳専科卒業。
国際中医薬膳師/中医薬膳茶師/薬膳講師/製菓衛生師
食と中医学の両面から、身近に楽しめる薬膳を提案している。
三度の飯と食べ物にまつわる知識が大好物。未知の料理やフルーツを追い求め、世界中を旅する。
日々の食養生の工夫、季節の薬膳、育てて食べる中薬、野草の活用、
生薬の身近な使い方など、薬膳にまつわるさまざまなテーマを歓迎します。
日本中医学院 卒業生の皆さまの「楽しい」「伝えたい」気持ちをお待ちしています。
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